乃絵佳先輩のモテる! 儀式講座 鉄 也「モテる儀式があるって聞きました!」 乃絵佳「シナリオじゃアレだったけど、あるわよ」 鉄 也「シナリオって何のことっすか。それよりマジっすか! 儀式でモテモテっすか!」 乃絵佳「まあね。儀式ってのはそういうもんだし」 鉄 也「へ。どういうことっすか」 乃絵佳「いい? モテる人ってのは、大概自信があるもんなのよ。その自信はどっから来るかってーと、大きく言って三つ。実績、経済力、あと肩書きね。テツ実績ある?」 鉄 也「あるはずねっす」 乃絵佳「経済力は?」 鉄 也「あったらモテてるっす」 乃絵佳「立場は?」 鉄 也「下っ端っす……って全然ダメじゃないすか!」 乃絵佳「わかってて言ってんのよ。その三つの中で、実績やら経済力は普通、一朝一夕じゃ身につかないでしょ。でも肩書きは何とかなりそうな気がしない?」 鉄 也「肩書きって……明日から俺が学級委員! とか?」 乃絵佳「そんなもんよ。いい? 儀式ってのはね、その肩書きとか権威とかを高めるためにあるのよ」 鉄 也「マジっすか!」 乃絵佳「マジもマジ。大マジよ。そもそも儀式に権威は付き物。切っても切れない関係なんだから」 鉄 也「うーん。よくわかんねーっす」 乃絵佳「わかるように説明してあげるからちょっと聞いてなさい。まず権威。これは目に見えるもんじゃないでしょ。でも威圧的な力がある。権威があると、何となく頭下げちゃうでしょ。例えば今、テツの目の前に総理大臣がいたら?」 鉄 也「頭下げるっす。とりあえず」 乃絵佳「そうね。私もそうするわ。権威ってのは人に影響を与えるのにすごく効果的なわけ」 鉄 也「そっすねえ……で、それと儀式とどう関係するんすか?」 乃絵佳「例えば――ダイエット」 鉄 也「へ」 乃絵佳「儀式ってのは『何らかの効果を得るための形式的な行動』だと言えるわ。そう考えれば、ダイエットだって立派な儀式よ。でね、ダイエットという『儀式』は、医学的な『権威』を持ってた方が都合いいのよ。『美白成分75%配合』とか『酸素の力で脂肪燃焼率30%UP』とか書かれてると、なるほど効果あるぞって思わない?」 鉄 也「そりゃー思うっす」 乃絵佳「でしょ。こうして『権威』が『儀式』の効果を強めてくれるわけね。そして逆に、『ダイエットに使われるくらいなんだから、きっとあの先生は凄いんだ』とかなるわよね。『儀式』に使われることで『権威』が高まるわけ」 鉄 也「お、おお? なるほど!」 乃絵佳「他には――例えば頭を良くする『儀式』には『学術的科学的権威』が不可欠。『なんとか大学合格者何名!』とか、『うんたら教授の超暗記法!』とか。これも権威を高めて『儀式』をより効果的にしてると言えるわ」 鉄 也「確かに、そういう塾や勉強方は効果ある気がするっす」 乃絵佳「実際あるのよ。効果があるから権威が高まる。権威が高まるから効果が高まる――そしてどんどん権威も儀式の効果も高まっていくわけ」 鉄 也「す、すげえっすね」 乃絵佳「そこで!」 鉄 也「そこで?」 乃絵佳「モテる儀式をやってあげようって訳よ。この(ごそごそ)本に書かれた方式を使ってね」 鉄 也「おおっ! 何か古くて凄そうっすね」 乃絵佳「凄そうじゃなくて凄いの。触っちゃダメよ。1855年にエリファス・レヴィが書いた原書なんだから」 鉄 也「えりふぁす……?」 乃絵佳「近代魔術復興の始祖と呼ばれる人よ……だから、ジュース買ってきて」 鉄 也「えーっ!? 意味わかんねーっす!」 乃絵佳「テツが私にジュースを奢ることで、私の権威が高まるでしょ? 権威が高まるとどうなるんだったっけ?」 鉄 也「儀式の効果が高まる……そうか! すげぇ! すぐ買ってきます!」(だだだーっ) 乃絵佳「オレンジ100%ねー……んー、こうやってうまく需要作って、こんなパチモンから利益を生み出すのも『儀式』のなせる業、かなー。帰ってきたらファッションのアドバイスくらいしてやるか。ジュース1本分くらいの効果はあるかな?」 文:びぜん@備前屋 協力:ENO OTE(敬称略)